田母神氏論文&発言について〜日本が「侵略国家」で何が悪い!
雑感は以下のとおり
1.日本が「侵略国家」で何が悪い!
戦前は、先進国といえば日本を除いて欧米諸国のみ。いずれも他国を侵略し植民地を持っていた。アジア・アフリカ・中南米のいずれの国も欧米列強いずれかの植民地だった。国の誇りを称揚する立場からすれば、当時、「侵略国家」でいられたということは、先進国の証しであって、何ら恥ずべきことではないはず。戦後の風潮に毒され過ぎではないか?日本は「侵略国家」だからアジアに謝罪すべきという立場も、「侵略国家」ではないのでアジアに謝罪すべきではないという立場も、同じ穴のムジナに見えるのだが。
2.バカがトップではまた戦争に負ける
「村山談話」はグローバルスタンダードで世界の常識。これは単にアジア諸国に向けられたわけではなく、当時の交戦国である英米諸国にも向けられているものと受け取られている。これを頭から否定する田母神氏の論文はドイツ空軍のトップが自分はナチスの再評価を放言しているようなもの。特に対米戦をコミンテルンの謀略と位置づけ人種差別を匂わせる件は、麻生首相が青くなり国会で呼び捨てにするのもむべなるかな。自分の発言の影響について全く想定できないのでは、トップに旧日本軍と同様に戦略的思考がゼロの人間が座っているということで、こんなことではまた戦争に負けてしまうだろう。
3.日本は北朝鮮か?
今回の件で言論の自由が封ぜられたと田母神氏は言っているようだが全く正反対。まさに日本が北朝鮮とは違う民主国家だからこそ、政府は田母神氏を辞任させることができた。北朝鮮だけでなく、アフガンでもイラクでもパキスタンでも、民主主義のルールがきちんと確立していない国では、大統領や首相や議会が公式に民意を代表しないとされ、しばしば軍部が武力を背景に大きな政治的発言力を持つ。権力のバランスが崩れてしまうので、政府といえども簡単に軍のトップの首をすげ替えることなどできない。
今の日本では、国会の議決がなければ海外派兵は叶わない(逆に議決があれば、恐ろしくも悲しいことに、ほとんど丸腰でも戦場に送り込まれてしまう。)もし選挙で共産党が政権を取り、自衛隊の戦力縮小を言い出したら、それに従わなくてはならない。これが民主主義の下での軍のあり方、いわゆる「文民統制」だ。
戦前はそれができなかった。まがりなりにも普通選挙が行われていたにも関わらず、政府の軍縮外交に軍部が反発、やがて、クーデターを起こして閣僚を暗殺するは、勝手に中国侵略にのめり込んで日本を泥沼の戦争に引きずり込むは、と散々なことになる。
4.今の日本は意外にちゃんとしている
タカ派イメージのある麻生首相もさすがに田母神氏を守ることはせずきちんと辞任させることができた。タカ派議員の一部を除いて自民党も批判的、自衛隊内部でも田母神氏の発言への反発があり処分は妥当と思われているということで、マスコミも、朝日新聞から産経新聞まで、テレビ朝日からフジテレビまで、政治信条に関わらず田母神氏の発言に批判的だった。だてに戦後60年以上も民主主義国家をやってきたわけではない。
5.それでも懸念は拭えない
義務教育レベルの教育をきちんと受け、常識ある人にとって、田母神氏の論文は全く荒唐無稽なものだが、世間一般、特にネットの世界ではある程度の支持があるらしい。圧倒的な人気を博した小泉政権以降、その政策により格差社会が定着。社会に不公平感が高まり、政治に民意が正確に反映されていないという不平不満も溜まっている。
戦前、普通選挙が始まり、国民は制度としての民主主義を手に入れたが、肝心の政党は党利党略に溺れ、汚職事件が相次ぎ、政党政治への信頼が低下して、変わりに超国家主義やファシズムへの期待(ファシズムは元々、悪い意味の言葉ではない)、その担い手としての軍部への期待が高まっていったのだ。
懸念は拭えない。